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2007年2月23日 (金)

■禅宗建築 伽藍概要

●伽藍配置

日本における禅宗寺院建立は中国南宋期の五山首位、径山万寿寺を模範とするところに始まる。その魁が鎌倉に造営された建長寺であり、その後の日本禅宗建築の基礎となった。鎌倉期に記された「建長寺指図(1331.元弘3)」から覗える主要な建築物の伽藍配置の特徴を表すと以下のようになる。

・ 総門、三門、仏殿、法堂が中心線上に配置。
・ 三門と仏殿間には参道を挟んで東に庫裏、西に僧堂が左右均等に配置。
・ 総門と三門間には参道を挟んで東に浴室、西に西浄が左右均等に配置。
・ 総門から仏殿に至る中央の参道には、左右に植樹(槇柏)が行われている。
・ 仏殿の奥やや東寄りに方丈が設けられている。
・ 境内のかなり離れたところに塔が設けられている。

これらの特徴はその後建立された円覚寺、東福寺といった創成期の禅宗寺院にもほぼ全て当てはまり、以後の大禅刹造営の範となる。但し火災や兵乱などの憂目により、創建時の寺観を留めている伽藍配置や堂宇は極めて稀である。



●七堂伽藍 役割と推移

禅宗寺院の規模の典型に適った堂宇のことを七堂という。ただ「七」は実際の数ではなく、各堂など諸堂宇を全て備えていることを表す。最も古い文献 ( 「尺素往来」 1400 年代 .一条兼良著 ) には以下のような建造物が揚げられている。   
      《 山門  仏殿  法堂  庫裏  僧堂  浴室  西浄 ( 東司 )》
また、これらの各堂宇を人体に準えて、その重要性を説明している場合もある。その他にも禅宗寺院における代表的建造物として、方丈、総門、鐘楼、経蔵などがある。

仏殿 
本尊を祭る仏堂。禅宗以外の古代寺院の金堂 . 本堂にあたる。伽藍の中心的存在あり、多くが方五間、一重裳階付と大規模である。但し五山寺院では戦乱や焼失により中世の遺構を残している寺院は無く、近世以降に再建され法堂と兼ねる場合が多い。法堂との兼用の場合、本堂と呼ばれているものもある。

法堂
経典、講義の聴講など仏法を講じる堂。「ほっとう」と読み、古代寺院の講堂にあたる。仏殿の後方に位置し、同格ないしはそれ以上の規模を持つ。一重裳階付が一般的。但し戦乱 . 火災等で焼失した後、殆どが再建されずに仏殿と兼用されている。本来の意で現存する法堂は、相国寺 . 大徳寺 . 妙心寺のみである。

山門 
仏殿前にある門。古代寺院の中門にあたる。大寺院では五間三戸、二階二重門形式の大きい規模を持つ。禅宗寺院でのみ、仏道修行の悟りを示す三解脱 ( 空、無相、無作 ) の門の意と略として三門ともする。現存するものは東福寺を除き、桃山 . 江戸期の再建である。

方丈
禅宗寺院において住持の居住、常駐する建物。伽藍の後方に建てられる。前方丈と内方丈があり、単に方丈と記されている場合、前方丈のことである

前方丈  大方丈 . 路寝ともいう。公の場で長老住持が接衆教化を行う場所。法堂的性格を持つ。だが塔頭の発達により教化の場を譲り、檀那応接や客殿的な場へと変わっていく。また小方丈の消滅により世譜住持の住居として、小方丈 . 庫裏的機能を持つ寺院も現れた。
内方丈  小方丈 . 小寝ともいう。私の場として住持が常住する場所で僧堂的性格を持つ。だが塔頭方丈の発達、私院化が進み、住持の住居的性格は塔頭方丈に移っていく。その為小方丈は早い時代にし衰退し姿を消すか、ないしは書院、客殿へと姿を変えていく。
 
僧堂 
僧侶が集団で起居する生活の場、及び座禅など修行する堂。禅堂 . 選仏場ともいう。古代寺院の僧房にあたる。中世以降、塔頭の発達により住居としての役割を塔頭方丈に譲っていくことになり、姿を消していく。残った物も選仏場として専化して機能をしていく。僧堂も中世のものは殆どが現存せず、禅寺としては東福寺を残すのみである。また近代以降では、新たに塔頭内に建設される場合が多い。
 
庫裏 
方丈に属する形で立し寺院の台所、貯蔵庫の役割を持つ。庫裡 . 庫院ともいう。切妻造妻側が参内を向いている事が多く、大きく独特の威容が覗える。近世、塔頭の発達により塔頭方丈が前方丈化し、庫裏は禅僧の居住性を持つようになる。また僧堂の衰退とともに食堂、喫飯の場ともなり、その役割も変化していく。やがて寺務局として寺院運営を主とする総合施設となっていく寺院も多く出現する。中には庫裏内の座敷が特化して書院、客殿となった所もある。

総門 
日常普通に使用される通用門。中門ともいう。勅使門の東側の並列されていることが多い。

西浄 
禅宗寺院内の便所。東司ともいう。実用的建築の為、現存する物は稀である。禅宗においては日常生活も修行の一部であり、浴室と共に重要視された伽藍の一つ。

浴室 
禅宗寺院内の浴室。現在の浴室とは異なり蒸し風呂形式であった。これも遺構は稀である。

鐘楼 
梵鐘を吊るす建物。中世の古建築のものは現存しない。普通袴腰付形式である。

経蔵 
経典を収めておく書庫。禅宗創期の伽藍配置では、山門の脇が常とされていたが、現在ではそれぞれ独立して建てられている。屋根の高い裳階付の輪蔵形式。

勅使門 
天皇、上皇の御幸の際など、特別の来賓を招く際に開かれる門。その為御幸門ともいう。通常は三門 . 仏殿の中心線上正面にあることが多い。総門の西側に位置する。

開山堂 
開山(祖師)の墓塔。祖師堂ともいう。仏殿内に内置されている場合もある。また方丈と兼ねている場合、昭堂 .礼堂ともいう。が主である。

放生池 
不殺生戒を重視し鳥獣を供養する為に設けられた境内の池。旧暦の 8 月 15 日に池に魚を放ち供養する営みを放生会という。

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  【主要伽藍の役割推移】
    (クリックして拡大)


               

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【現存する主要伽藍の造営時期】
   (クリックして拡大)




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