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2007年2月24日 (土)

◆ガラス工房解説 3 【Lobmeyr】

Lobmeyr

1822年11月、オーストリア北部グリースキルヒェン出身のヨーゼフ.ロブマイヤーがウイーンにガラスショップを創設したことに始まる。この時代のボヘミア周辺は既にガラスの一大生産地域となっていた。同地域はローマ、ヴエネチアと違い山間部に位置する為、伝統的にカリガラスを使用していたが新技法により透明度の高いカリ.クリスタルガラスが開発され、特に17世紀後半からその特性を生かしたボヘミアングラスがヨーロッパの市場を席巻していた。
そんな中、ヨーゼフもカリクリスタルのグラスセットの仕入販売を行い、当時台頭してきた新興ブルジョアジーの嗜好とも相まって事業は順調に推移した。 1823年には表通りの広い店舗に移転、やがてデザインも行うようになる。1835年にはハプスブルグ家皇帝フェルナンドー世にシャンデリアとグラスセットを納め、翌年には早くも「皇帝御用達」の勅許を受ける。また1851年からは、ビンペルクのマイヤーズ.ネッフェ社と提携してボヘミアとの関係を深めていく。

1855年、ヨーゼフが死去するが息子のヨーゼフJrとルードヴィヒの兄弟が二代目となり、1860年に社名を正式に「J&Lロブマイヤー」とする。同年、「オーストリア王室御用達」の勅許を受けた。その後も1867、1878、1900年のパリ万国博覧会などを筆頭に各種博覧会で金賞、銀賞を受賞する。同時期にシェーンブルン宮殿やウィーン学友協会ホール、ザッハホテルなどのシャンデリアにも着手、「シャンデリアのロブマイヤー」の称号が輝きを放つようなる。19世紀後半からフランスを中心にアールヌーヴォーの波が押し寄せてくるが、相容れないスタイルとは迎合せずロブマイヤーは距離を置いた。
1917年にルードヴィヒが他界した後、甥のシュテファン.ラートが跡を継ぐ。シュテファンはウイーン工房(反アール.ヌーヴォー派によって設立されたガラス工房)のヨーゼフ.ホフマンを美術部長に迎える。彼はロブマイヤーの伝統的スタイルを守りつつ、バロック風の古典的デザインやアールデコ期の幾何学的でモダンなデザインを見事に融合、昇華させた。特にシュヴァルツロット技法による黒色文様はこの時代の代表的形式であった。また、ボヘミア各地に自社ガラス工場を設立、同地の伝統的デザインや装飾技術を吸収していった。因みにこの時代には「パトリシアン」を筆頭に、「ベルヴェァーレ」「チロル」「アンバサダー」などの名作が発表され、現在でも作り続けられている。
しかし第二次大戦が始まり、シュテファンはオーストリアを離れなければならなくなる。息子のハンス .ラートが四代目となり戦火を逃れながらも制作は継続された。この時期、スワロフスキーの工場で仕事を続けている。ようやく戦争が終わるとハンスは被災した教会など、バロック建造物の修復に力を注いでいった。

そして 1966年、ロブマイヤーを再度世界に知らしめ、その評価を不動のものとした作品が完成する。ニューヨーク、ニューメトロポリタン.オペラのシャンデリア。オーストリア政府が戦後の復興の為、多大な援助を受けたアメリカに対しての感謝の意を表し贈呈したものである。その後、旧ソ連クレムリンホール、中近東宮殿などのシャンデリアや、世界各国の政府関連、王族貴族などへのテーブルウェアなど次々と依頼は舞い込んだ。だが自動車事故でハンスが急逝、ハラルト、ぺ一ター、ヨハネス.シュテファンの三人の息子が共同経営する形で再出発する。彼らは伝統であるシャンデリア・グラスセットの他に、1970年代になって世界的な高まりを見せてきたスタジオガラス.アートの制作を試みる為、新しい工房を設立するなと新機軸の展開も試みた。

現在ロブマィヤーはウィーン工場のみで制作を行っており 、 ハラルトの息子、アンドレアス .ラートが六代目として就任している。高級アートガラス愛好家からは依然として高い人気を誇っており、その理由はロブマイヤー独自の、世界屈指と言われる技法と高い芸術性に起因している。
特にホイールエングレーヴィング技術は世界最高峰のレベルを有する。一般的に使用されるダイヤモンドではなく、銅製のコパーウィールを用いることにより、切り口の柔らかい、繊細でかつ立体的な表現が可能であるが、熟練した職人の高度な技術が要求される。文様の周辺を彫りこむことにより、浮き出たように見える「レリーフ (カメオ)」と、文様そのものを掘り込み、その深みの微妙な差異によって立体感を出す「インタリオ」を駆使し、ロブマイヤー独特の、繊細で柔らかく、ぬくもりすら感じさせる装飾が施される。
またもう一方で、カリクリスタルの硬質で軽い特性を生かした宙期吹きの極薄グラスもロブマイヤーの伝統によるもの。モスリン.グラスと呼ばれるこれらは「そよ風に吹かれてグラスが弛んだ」という伝説を生んだ。透けるような薄さと持ち心地の軽さ、唇に触れた際の絶妙の触感は他では見られない。

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